ガトーエシレを買ってみた
最近、このブログはアクセスもガンガン増えてきて、
気色がよろしいことこの上ないのですが。
もっと上げたい、もっと読者を喜ばせたい、
そんな野心がより一層と強くなってきた昨今。
人を集めたいからこそ、
「たまには自分が集まる側になってみたらどうだろうか?」
という逆転の発想が、自分の中に芽生えるようになりました。
毒を持って毒を制すじゃないけど、
爆発的に人を集めている立場を研究してみるのも、
今の僕にとって、一興として必要な事なのかな、と。
そんな面白い企画を企てたくなったのです。
となってくると、
「よし!日本で一番行列ができるお店に並んでみよう!」
という野心が、自分の中で芽生えるようになりました。
自分が行列のできるお店に並ぶ事で、
より一層と人を集める側の立場の気持ちが理解できるだろう、
と安直に考えるようになったのです。
ということで色々と調べまくった結果、
どうやら「エシレ」という洋菓子ショップが、
日本で一番の行列を誇るお店である事がわかりました。
「エシレ」は、バターのブランドとして非常に有名ですが、
その本店が丸の内に存在するらしく、
そこでしか買えないバター菓子が多数販売されているらしいのです。
それが非常にクオリティが高いらしく、
開店前から信者たちが行列を並び、開店と同時に売り切れ続出で、
とにかく凄まじい惨状が毎朝毎朝、繰り広げられていると聞きつけました。
そして、特にその中でも、
「ガトーエシレ」
というバターケーキがイカれているらしいのです。
というのも、このバターケーキは、
もちろん予約不可で、ネット販売もしておらず、
店頭でしか購入する事ができないのですが。
1日15個しか販売されないので、
開店前に整理券が配られ、そもそも店頭に並ぶ事はないらしいのです。
そのカリスマ性から、
「幻のケーキ」と業界では呼ばれており、
日本一入手難易度の高いスイーツであると知りました。
・・・。
おもしれえ、何としてでも手に入れてやる。
武者震いが止まらなくなった僕は、
さっそく土曜日の朝に、
丸の内のエシレ本店に突撃してみることにしました。
(これが地獄のはじまりになるとも知らず・・・。)
さて、土曜日の朝、
僕はさっそく埼玉の田舎から、丸の内まで足を運んでみました。
エシレ本店は10時開店なので、
まあ、9時頃から並べば、さすがに買えるだろうと。
そんな安易な発想で、9時過ぎにお店に到着しました。
!?
なんとそこには、200人近い行列がすでに存在し、
とてもじゃないけど、ガトーエシレが買える気配すらありませんでした。
(行列の写真を撮りたかったのですが、
200人は多すぎて1枚の写真に納まりきらないので撮影すら諦めました。)
おしいとか、悔しいとか、
それ以前の問題で、そもそもお話になりませんでした。
・・・。
完全にエシレを舐めていました。
この時僕は、悲しいとかムカつくとか、
そんな感情は一切湧き上がらず、なぜか笑えてきました。
「ああ、俺が間違ってた。敵ははるかに強大だった。」
例えるなら、スライムを倒そうと思って、
こん棒を片手にマップを歩いていたら、いきなりデスピサロがエンカウントし、
2秒で瞬殺、凌辱をされてしまった気分です。
先着15名しか買えないケーキを、
200番目に並んでいる様では、買えるわけがありません。
そして僕は、行列を目の当たりにするやいなや、
きびすを返し、その日は埼玉の田舎にとんぼ返りしました。
たしかに、たしかに今日は僕の負けです。
それは認めます。
だけどさ、ちょっと考えてみてよ。
今日は土曜日なわけで、
ということは明日は日曜日なわけで、
会社も休みなわけです。
じゃあ、明日の日曜日にリベンジできるじゃん。
明日ゲットすれば、今日の負けが一転して逆転できるのです。
もちろん、本当は平日に突撃したい気持ちは山々ですが、
社畜の僕は土日しか猶予がないのです。
となると、明日がラストチャンスです。
よし、今日は素直に負けを認めて、
明日の朝にもう一度チャレンジしようと。
そう奮い立った僕は、
帰りの電車で歯を食いしばり、拳を握りしめ、
静かなる青い炎を心の中で燃やしました。
しかし、ここで問題があります。
朝9時で200人の行列だったという事は、
おそらく8時に到着したとしても、
100人近い行列がすでに存在すると思うんですよ。
しかし、ガトーエシレは先着15名までなので、
それではお話になりません。
ということは、最低でも6~7時に並ばなくては、
ガトーエシレが買えるはずもありません。
だけど僕は埼玉の田舎者なので、
家からエシレ本店までは片道2時間近くはかかるわけで、
始発で出発したとしても、到着は7時前後になります。
となってくると、
どうしても到着時間は7時くらいになってしまうので、
ここからは、もはや賭けです。
最速で到着したとしても買えるか買えないか、
それはわかりません。神のみぞ知る世界になります。
さて、日曜日の朝5時、
まだ外は暗いけど、さっそく僕は始発電車に飛び乗り、
乗り換えをし、やっとこさ東京駅に到着しました。
そして、迷子にもならず、
すぐさま最速最短でエシレ本店に到着しました。
この時の到着時間はちょうど7時でした。
・・・。
なんと、すでに10人近い列はできているものの、
無事に15番以内には食い込む事ができました。
正直、心の中では、
5位以内にランクできると思っていたのですが、
やっぱりエシレは最後まで侮れないですね。
というのも、僕が到着するやいなや、
5分もしないうちに、人がぞろぞろ集まってきて、
すぐに15人以上の行列が生じました。
つまり、あと5分遅刻していたら、
また昨日みたいにガトーエシレは買えず、
指をくわえながらとんぼ返りする羽目になっていたのです。
そう考えるとゾッとしますが、
まあ15位以内に入れたのでよしとしましょう。
さて、喜びも束の間、
ここからが本当の勝負です。
というのも、エシレ本店に、
実際に行ったことがある人はわかると思うのですが。
このお店の立地って、ビルとビルの谷間に存在するので、
強風が尋常じゃないのです。
常時、ビュウビュウと風が吹き込み、
季節も12月の年末なので、体感気温の低さたるや半端じゃありません。
しかし、開店は10時からなので、
およそ3時間は直立不動でこのまま並ぶ必要があります。
・・・。
ええ、並びました。
ずっとイヤホンで音楽を再生しながら、
ひたすら時間が過ぎるのを待ちわびました。
どうして自分はこんなことをしているんだろう、
そもそもエシレバターすら食った事ないのに、
よくわからないケーキのために、なぜ並ばなきゃいけないんだろう。
寒さで足は震え、トイレに行きたくなっても、
行列から外れたら苦労が水の泡なので、
尿意も我慢するしかありません。
まあ、お漏らししたとしても、
関係ないですけどね。
恥ずかしいけど、どうせ知り合いもいないし、
周りは一期一会の人達ばかりなので、後腐れもないし、
恥をかいても、それは一瞬の失態で終わりますからね。
乾燥で喉も乾いてくるけど、
飲み水を買いに行くこともできません。
兎にも角にも、何があろうとも、
ひたすらに時間が過ぎるのを待つしかないのです。
そんな中、時間が経てばたつほど、
いつの間にか行列も増え、後ろを見渡したら、
昨日と同じで、200人近い大所帯がそこには存在していました。
当然ですが、15番目以降の人達は、
ガトーエシレを買う事ができません。
しかし、それでも並んでいるのです。
おそらくですが、2番目に人気の、
「クロワッサン」を買うためだと思います。
どうやら調べたところによると、
ガトーエシレほどではないにしろ、
クロワッサンの人気も相当ヤバいらしいのです。
午前中のうちに完売は当たり前みたいです。
というか、200人の行列ともなると、
ガトーエシレはもちろん、クロワッサンすら買えない気がするのですが…。
たぶん並んでいる人達も、
「買えるか買えないかわからないけど、とにかく並ぶしかないだろう」
という妥協案に近いと思います。
「ああ、本当に始発電車で来てよかった。」
僕は不謹慎ながら、後ろの行列の見る度に、
朝5時に出発した数時間前の自分を褒めてあげたくなりました。
どうして自分はこんな事をしているんだろう。
こんな事をして何の意味があるんだろう。
何度も何度も自分を責めたくなりましたが、
その度に後ろの行列を見れば、
「苦しいのは自分だけじゃない!」
と再確認させられ、気持ちを新たに奮い立たせていました。
むしろガトーエシレを買う権限があるだけ、
自分は恵まれていると思わなければ罰が当たります。
僕だけじゃなくて、前に並んでいるマダム達も、
寒さで震えながら戦っているのです。
辛いのは僕だけじゃないのです。
みんなも同じなのです。
そんなこんなで、ついに時刻は9時30分を迎えました。
お店から店員さんが現れ、
大声でアナウンスをはじめました。
店員
「本日は寒い中、お越しいただきありがとうございます!
ではこれから、ガトーエシレの整理券を先着15名様にお渡しします!
なお、整理券をお持ちでも、
列から一度離れてしまうと、購入権は剥奪になるのでお気を付けを!」
まあ、さすがにあと30分なので、
列から離れる事はありませんが、とにかくあとちょっとです。
僕は11番の整理券を受け取り、
ついに来る時が来るのだと、気持ちがドキドキしてきました。
お店からはバターの焼けた匂いが漂い、
それが僕の鼻腔をくすぐり、寒さと相まって、
正常な判断力が失われてきました。
ここからは本当に一瞬でした。
いつの間にか10時を迎え、
ついにお店のドアがオープンしました。
さっそく僕らは順番に入店し、意中の商品を注文していきました。
ちなみに僕のオーダーは、
・ガトーエシレ×1
・クロワッサン×2
・有塩エシレクロワッサン×2
・無塩エシレクロワッサン×2
・フィナンシェ×2
・マドレーヌ×2
という泣く子も黙る、欲張りチョイスとなります。
さすがにここまで並んだからには、
ガトーエシレだけで帰るのは癪だったので、
「東京店限定アイテム」はすべて買っておきたかったのです。
ちなみに大阪にもエシレの店舗は存在しますが、
ガトーエシレとか焼き菓子は東京店にしか存在しないみたいです。
そして僕は、大満足で店を後にしました。
とまあこんな感じで、
僕のエシレ冒険記は以上になります。
家に帰った僕は、
ケーキ半分と焼き菓子の半分を友人に渡し、
さっそく食べてみる事にしました。
もちろんめちゃくちゃ美味いです。
苦労の末に手に入れたから美味しく感じちゃう、
という感情論もありますが、
それを抜きにしても、べらぼうに美味いです。
特にバターケーキの舌触りは尋常ではありません。
舌に触れた瞬間、とろけるような触感で、
いつの間にか、雪のように溶けてなくなってしまいます。
バターケーキと聞くと、重たい印象があると思いますが、
エシレバターを使っているからか、比較的さっぱりと召し上がれます。
そもそもバターケーキ自体が、
このご時世ではレアな存在なわけですが。
ガトーエシレは他のバターケーキとは一線を画します。
バターケーキが好きな人は、
絶対に人生で一度は食べた方が良いと思います。
しかし、ご存知の通り、
入手難易度は凄まじいので、それ相応の覚悟が必要です。
まあ、平日に休みを確保できる人は、
そこまで並ばなくても買えるのかもしれませんが、
それでも8時前には並ばないとキツイと思います。
休日なら7時には並びましょう。
それが僕の実体験から分かった事です。
さて、エシレの話はここで終わりますが。
今回の一件でわかったのは、
ちゃんと魅力的なサービスを提供していたら、
劣悪な環境でも人は勝手に集まる、という事です。
「エシレ」と聞くと多くの人は、
青と白の爽やかなブランドイメージに、
オシャレな気高い印象を抱くかもしれませんが。
ちがいます。
実際は極寒強風の空の下、直立不動で3時間並んで、
トイレを我慢し、ただひたすら時の流れを待つ事を要されるのです。
これがエシレの全貌です。
だけど、それが許されちゃうのです。
魅力的なコンテンツさえあれば、
客にペコペコへりくだる必要もないのです。
おそらく、エシレに並ぶようなお客さんは、
セレブなマダムはもちろん、彼女や妻を喜ばせるために、
奮闘している男も多いと思います。
だから客層も悪くないというか、
むしろ落ち着いた大人が多いと思います。
世の中には注文が1分遅れただけで、
怒り狂う残念な客を相手に商売をしているお店も多いですが、
エシレはそれの逆を貫いています。
やっぱり、薄利多売って悪ですね。
誰からも愛されようとか考えるよりも、
本当に好きになってくれる人だけを相手に商売した方が、
お店側も穏やかな気持ちで商売が展開できます。
エシレの公式サイトを見てもらえばわかるのですが。
ブランドイメージを徹底するために、
「バター」に対する開発秘話やら提供実績やら、
希少性をスマートに能書きとして入念に設定しています。
それと同時に、
「クレーマー気質の図々しい客はお断り」
って雰囲気を自然と醸し出しています。
このワンランク上の世界観を味わうために、
グルメ達はこぞって行列を耐え忍ぶのだな、と。
それが身に染みてわかりました。
普段はコンビニとかファーストフードとか、
楽をして、質素な物ばかり食べている僕ですが。
たまには苦行と贅沢を、
同時に味わってみるのも悪くないですね。
あとやっぱり、エシレの本当の魅力は、
苦痛に歪みながら行列を並んだ末に、味わってこそ本物だと思います。
もちろん普通に食べても美味しいですけど、
これを読んでいるあなたも、一度地獄を味わってみてはいかがでしょうか。
どうしてもイライラすると思うけど、
その末に食べるからこそのグルメです。
ネット通販が蔓延る昨今、
一度原始的に、泥臭く自分の足で、
意中のアイテムを手に入れる快感ってヤバいですよ。
ぶっちゃけ、エシレを食べた時よりも、
整理券が配られた瞬間、エシレを手に入れた瞬間、帰りの駅で我慢してた小便をする瞬間、
この刹那が一番、脳汁がドパドパ分泌される時でした。
少年時代に例えるなら、
オオクワガタに遭遇した時のような、
オオサンショウウオに遭遇した時のような、
そんな麻薬的なヤバさを久しぶりに感じる事ができました。
それを経験できただけで、
僕はエシレの行列に並んで本当に良かった、
と心の底から思えました。
自分ももっと面白い記事を書きまくって、
エシレのように相手を喜ばせる存在になりたいと、
やる気を貰う事ができました。
魅力的なコンテンツさえ作れば、
人は簡単に集まるし、ファンにだってなってもらえるじゃん、
ってことを再認識させてもらいました。
あと、ガトーエシレに関しては、
女性にプレゼントするともっとヤバいと思います。笑
味とかクオリティはもちろん、
包装も宝石箱みたいな風貌なので、非常に喜んでもらえると思います。
ーーーーーーーーーーーー物足りない方へーーーーーーーーーーーーー ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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